あの頃は皆病気だった

 

 

祖母が死んだ

ずぅっと寝たきりで意思疎通もろくに出来なくて、有り体に言うと老衰で死んだ

思い出は特に無い そもそも私の記憶力はゴミカスなので幼稚園あたりの記憶はほぼ無い おぼろげとかそういうレベルではない 無

父方ほど頻繁に行っていた訳では無いし、どことなく漂う昭和のかほりに苦手意識を感じていたのも確か

 

病室で日に日に弱っていく姿を見て、母や姉は頑張ってだとか、死んじゃうよみたいな声をかけるんだけど、私はもうやめてほしくて、もういいんだよって、言い方悪すぎるけど早く死んで欲しかった

死ぬってなんだろう

私にとっての祖母は私のことがわからなくなった時点でもう死んでしまった

ただの骨と皮と肉の塊 土気色になっていく肌に触るのが怖くて、血管が透けてパンパンに浮腫んだ足なんかもう見てられなくて、ただ呼吸しているだけ 時たま雄叫び

おばあちゃんの分まで頑張って生きよう、なんて気持ちはまず起きない こうなる前に死にたい そう思ってしまう

姉は泣いていた 父方の祖父が死んだ時は普段見舞いすら行くのを嫌がっていたのに、そういうところが嫌いなんだと論点がズレる

 

結局最後まで泣けなかった

泣かなきゃいけないっていうのは無いけど、別に悲くないのかと聞かれればそんなことはないし、それにしても最初から最後まで溜息しか出なかった

火葬場のドアが閉まる時 息を呑んだ

肉体がなくなってしまう 骨に価値があるとは思えない 完全に死んでしまう

行かないでとまではいかないけど、少しの絶望感

ああこれで全部終わっちゃうんだなって

みんなの記憶も燃えてなくなるわけじゃないけど

肉体としての存在の終わり さよならはじめまして

 

帰りの車で大嫌いな弟の声をBGMにストレスフルの家族ドライブ 私の記憶は燃やしてなくして欲しい

 

自分の家に帰ってきて泣いた 葬式では泣かなかったのに自分が今すぐ死ねない現状に泣いた

もう人の為に泣けなくなってしまった

感情が日に日に死んでいく

私だって死にたくて死にたくて堪らないのにどうしたらいいのかわからない  

私そうです疲れてるのよ